抗酸化物質: 本当の話

13.06.04 オーソモレキュラー医学ニュース

オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(点滴療法研究会)
溝口 徹(新宿溝口クリニック)姫野 友美(ひめのともみクリニック)
齋藤 糧三(日本機能性医学研究所) 北原 健(日本オーソモレキュラー医学会)
翻訳協力西本貿易株式会社ナチュメディカ事業グループ

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

バイアスのかかった研究者、受け売りするマスコミ

執筆者: Gert E. Schuitemaker, PhD

(OMNS、2013年5月14日) 見解が栄養素のように細かく分かれるテーマというのはあまりない。果物や野菜をたくさん摂る良質の食事は、健康に良く、多くの疾患を防ぐということは、ほとんどすべての人が認めている。そうした食事には、必須栄養素と抗酸化物質がたっぷり含まれている。それなら、なぜ、抗酸化サプリメントに対する非難が、世界中のマスコミ報道でこれほど取り上げられるのか?

抗酸化物質が作用する仕組み

酸素は、生命に必要であるが、その一方で、体内の全組織にわたり、必然的に反応分子を発生させる。フリーラジカルは、DNAや、細胞が正しく機能するために必要な酵素など、不可欠な分子を損傷することがあるため、どんな細胞にとっても危険である。抗酸化物質は、こうした反応性の高いフリーラジカルを捕らえ、安全な方法で正常な状態に戻す。抗酸化分子は実際に体内で生成されるが、食事によってもたらされた抗酸化物質と一体になって作用する。抗酸化物質の主な摂取源は果物と野菜であるが、サプリメントからも得られる。
抗酸化物質は、いくつかのグループに分けることができる。「有名な」抗酸化物質であるビタミンC、ビタミンE、セレンの他に、ベータカロテンなどのカロテノイド、リコピン、ルテイン、アスタキサンチンを含む別のグループもある。また、ほとんどの果物に含まれているフラボノイドから成るグループもある。こうした抗酸化物質はすべて、植物が太陽放射、熱、有害化学物質、カビなどの環境要因から身を守るのに用いる分子であるが、動物の生命も守っている。抗酸化物質は、酸化された環境にて常に形成される酸素ラジカルの損傷作用から地球上のすべての生命(植物・動物・人間)を守っている。太古の昔から、すべての生命体は一緒に進化しており、生存のため互いに依存している。そうして、人間と動物が自己の健康を維持するためには、とくに抗酸化物質を多く含む果物と野菜が必要となったのである。

メタ分析と操作

ノーベル賞受賞者であるDr. James Watsonは、転移ガンに関する論文の中で、以下のとおりサプリメントに短く触れている:「フリーラジカルを壊す抗酸化性栄養サプリメントは、それによって予防されたガンより多くのガンを引き起こしてきた可能性がある」[1]。Dr. Watsonは、ノーベル賞を2度受賞したLinus Paulingによる、ガンの影響および抗酸化物質であるビタミンCに関する見解を言葉少なに非難している。遺憾ながら、彼は自分の理論を裏付けるために、Dr. Paulingのケースを利用している:「Linusは、1994年に93歳で前立腺ガンのため亡くなったとき、ビタミンCを毎日12g摂っていた。末期ガンの不治性の多くが抗酸化物質の摂り過ぎから生じている可能性があることを強く示唆する最近のデータに照らして考えれば、抗酸化剤の使用について、それによって予防されるガンよりはるかに多くのガンを引き起こす可能性があるのか否か、真剣に問う時が来ている。」

また、ガンの予防策としてのサプリメント使用を不適格と見なすため、Watsonは、ニス大学(セルビア・モンテネグロ)の教授であるDr. Goran Bjelakovicが率いる研究チームが実施しJournal of the American Medical Association (JAMA:米国医学界雑誌)にて公表された不審な研究 [2] について、同じパラグラフで触れている。この研究は、研究文献のメタ分析で構成されたものである。こうした統計解析法は、医学界では事実上、神聖視されており、複数の科学的研究の結果を組み合せたものであるため、最も確実と見なされている。しかし、この方法は、対象とする研究の選択によって偏りが出やすい。また、選ばれた各研究の違いが大きく、目的や対象集団がばらばらであることも多い。健康な人と病気の患者が区別されていない場合もある。最近のメタ分析一つが、世界中のマスコミの注目を集め、「抗酸化サプリメントは死亡リスクを高めるおそれあり」というような憂慮すべき記事見出しを生むに至った。このメタ分析から研究グループが下した結論は、抗酸化物質であるベータカロテン、ビタミンAおよびビタミンEが死亡リスクを高める可能性がある、というものであった。

科学者のほうがよく知っている

Bjelakovicによるこのメタ分析研究が方法論上の普遍的な規則に違反しているのは明らかである。世界中の科学者から厳しい批判が寄せられており、その中には、ハーバード大学のような一流の研究機関からの批判もいくつかある。ニューヨークタイムズ誌の記事の中で、カリフォルニア大学バークレー校の生化学部教授であるDr. Bruce Amesは、「ガンのようなものを対象にしてこの種の研究を行うのは無理である。当初健康だった人がガンになるのに20年かかることもあるのだから」と述べている。同誌は、以下のコメントを加えている:「1~2種類の抗酸化剤を比較的短期間追加しただけで、ゲノムはさておき、何十年にも及ぶ低質な食生活や運動不足を打ち消すことができると期待する科学者や消費者は、考えが甘い」。[3]

Linus Pauling研究所によると、Bjelakovicのグループは、抗酸化物質の肯定的な結果を示した2つの重要な研究 [4, 5] を完全に無視していた。抗酸化物質が健康に不可欠であると見なされることに変わりないことは、こうしたコメントからも明白である。

「抗酸化剤はいくつかの異なった方法で人を殺しているはず、という考えはちょっと信じ難い」と、タフツ大学の栄養学教授であるDr. Jeffrey Blumbergは言う。「私は信じない。」 [3]

「対象患者のほとんどはすでに疾患があったため、この結論は健康な集団には全然関係がない」と、サプリメント産業の業界団体である米国栄養評議会の副会長Dr. Andrew Shaoは述べている。[3]

医学雑誌におけるバイアス

根拠が薄弱なBjelakovicのメタ分析が、なぜ、JAMAというような一流の医学雑誌で公表されることになったのか、疑問が生じる。その答えは、JAMAを含む11の主要医学雑誌の内容を評価し、2008年に公表された研究に関係があるかもしれない。[6] この研究グループは、1年分の各医学雑誌を丹念に調べ、製薬会社の広告が多い刊行物には、食品サプリメントに関する記事が少ないことを発見した。また、食品サプリメントに関する記事が公表されていても、低質である傾向、ならびに、栄養製品の効果と安全性について否定的な見解を示している傾向があった。例えば、製薬会社の広告が多い刊行物に掲載されたサプリメント関連記事のうち、67%は、サプリメントの安全性に関して否定的な評決を下していた。一方、製薬会社の広告が少なかった雑誌では、この割合は4%に過ぎなかった。また、製薬会社の広告が最も多かった定期刊行誌では、栄養サプリメントの効果が否定的に報告されている可能性が50%高かった。製薬会社の広告を集める必要性によって医学雑誌の内容が左右されていると見るかどうかは、各自の判断に任せる。

マスコミの脅し

Bjelakovicによるメタ分析は、世界中で報道の大きな歪みを助長している。「抗酸化物質を含むサプリメントは死亡リスクを高めるおそれがある」というのが、おおむね平均的な見出しである。しかし、そこで用いられたものと同じ研究にもとづいて、もっとバランスのとれた新しい分析を導き出すのは容易である。ホーエンハイム大学(ドイツ)のHans Biesalski教授とタフツ大学(米国)のJeffrey Blumberg教授が率いる国際的な科学者チームは、同じ66の研究を対象として新たに分析を行った。[7] この研究チームは、リスク便益分析にもとづく別の研究方法をとった。つまり、死亡リスクについて、一方向からだけではない見方をし、また、栄養素による既知の効果も考慮した。そして、この66の研究を、それぞれの被験者をもとに、健康な人を調べた研究、1回疾患が発症していてその後の発症を防ぐ必要がある患者を調べた研究、病気であり抗酸化剤を用いた治療を受けていた患者を調べた研究の3つに分類した。

このBiesalskiのグループは、Bjelakovicによる結論と全く逆の結論に至った。この66の研究のうち、36%は、抗酸化物質の補給が良好な健康転帰をもたらしたことを示しており、60%は中立的で、否定的な結果を示していたのは4%だけであった。抗酸化物質の補給は、とくに、健康な集団において、栄養不良の傾向がある被験者の疾患リスクを下げる効果があることが判明した。

Biesalskiによる分析は、多くの臨床研究によって裏付けられている。Dr. Ralph Mossは、タウンセンド・レター(補足:医師向け専門誌)の中で、ワトソンの論文に対し、次のように答えている [8]:「Watson教授は、ガン患者、とくに、進行期のガン患者に抗酸化剤を使用した実際の例を引用することにより、臨床的な現実にもとづいて論文を書くべきだった。」 健康な人における抗酸化サプリメントのガン予防作用に関しては、Dr. Watsonの意見は単にBiesalskiによるメタ分析の上に築かれたものにすぎない。また、WatsonはBiesalskiの分析には触れていないため、この分析は、またマスコミの注目から外れている。

結論

この50年間に行われた多くの研究から、抗酸化物質は、とくに健康な人が長期間摂った場合、ガンをはじめ、加齢に伴う他の疾患を防ぐことがわかっている。[9] ガン患者や、ガンのリスクが高い人の場合、栄養意識の高い医師と相談して、抗酸化物質を適量摂取すれば、治療にも大いに役立つ可能性もある。[10]

健康を維持するための最善のアドバイスに変わりはなく、良質の食事を摂る(全粒穀物、緑の濃い葉野菜、果物、ナッツを摂り、獣肉の量は最小限に抑える)こと、必須栄養素を欠く加工食品は避けること、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛、カロテノイド、フラボノイドなど、不可欠なビタミン・栄養素・抗酸化物質が適量含まれているサプリメントを摂ることである。

参考文献

1. Watson J. Oxidants, antioxidants and the current incurability of metastatic cancers.(酸化剤、抗酸化剤、および転移ガンの現在の不治性) Open Biol 2013, 3(1), 120144.

2. Bjelakovic G, Nikolova D et al. Mortality in randomized trials of antioxidant supplements for primary and secondary prevention.(一次予防および二次予防のための抗酸化サプリメントに関する無作為化試験における死亡率) Systematic review and meta-analysis JAMA 2007; 297:842-857.

3. http://www.nytimes.com/2007/03/13/health/13cons.html

4. Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell’Infarto miocardico. Dietary supplementation with n-3 polyunsaturated fatty acids and vitamin E after myocardial infarction: results of the GISSI-Prevenzione trial.(心筋梗塞後のn-3多価不飽和脂肪酸とビタミンEのサプリメント摂取:GISSI-予防試験の結果) Lancet. 1999; 354:447-55.

5. Blot WJ, Li JY et al. Nutrition intervention trials in Linxian, China: supplementation with specific vitamin/mineral combinations, cancer incidence, and disease-specific mortality in the general population.(中国の臨県における栄養介入試験:特定のビタミン/ミネラルの組合せの補給、ガンの発生率、ならびに一般集団における疾患特異的死亡率) J Natl Cancer Inst. 1993; 85:1483-92

6. Kemper KJ, Hood KL. Does pharmaceutical advertising affect journal publication about dietary supplements?(製薬会社の広告はサプリメントに関する雑誌公表文献に影響を及ぼしているか?) BMC Complement Altern Med 2008; 8:11

7. Biesalski HK, Grune T et al. Reexamination of a Meta-Analysis of the Effect of Antioxidant Supplementation on Mortality and Health in Randomized Trials.(無作為化試験における死亡率と健康に関する抗酸化物質補給の影響を調べたメタ分析の再調査) Nutrients 2010; 2(9):929-949.

8. Moss R. Do antioxidants harm cancer patients?(抗酸化剤はガン患者に害を及ぼすか?) A reply to prof. Watson. Townsend Letter 2013; 357(4):38-41.

9. Hickey S, Saul, AW (2008) Vitamin C: The Real Story.(ビタミンC:本当の話) Basic Health Publications. ISBN-13: 978-1591202233.

10. Gonzalez MJ, Miranda-Massari JR, Saul AW (2009) I Have Cancer: What Should I Do? Your Orthomolecular Guide for Cancer Management.(ガンがある私はどうすべきか?ガン治療のためのオーソモレキュラーガイド) Basic Health Publications. ISBN-13: 978-1591202431.

翻訳監修:北原 健 (日本オーソモレキュラー医学会)