赤肉は体に悪い。いや待てよ、やっぱり良い!

12.07.05 オーソモレキュラー医学ニュース

オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(点滴療法研究会)
溝口 徹(新宿溝口クリニック)姫野 友美(ひめのともみクリニック)
齋藤 糧三(日本機能性医学研究所) 北原 健(日本オーソモレキュラー医学会)
翻訳協力西本貿易株式会社ナチュメディカ事業グループ

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オーソモレキュラーメディシン・ニュースサービス(OMNS) 2012年6月19日号

リーダーズ・ダイジェストの不条理な記事

論説: Helen Saul Case

(OMNS、2012年6月19日) リーダーズ・ダイジェストの最新号に目を通していて、私が笑ってしまったのは、「笑いは最良の薬」というような気の利いたコーナーではなく、読者に向けた滑稽で矛盾した健康アドバイスである。

まずは納得できる話から始めよう。「Is Meat Good or Bad for You?(獣肉は体に良いか?悪いか?)」という記事[1]の中で、執筆者は、赤肉の摂取が命を縮める可能性について説明している。彼は、121,000人超の成人を最長28年間追跡したハーバード公衆衛生大学院での研究[2]を引用し、「赤肉を毎日3オンス(約85g)食べていたグループでは、獣肉を食べていなかったグループと比較して、調査終了前に死亡する可能性(多くは心疾患やガンによるもの)が約13%高くなっていた」と伝えている[1]。また、加工獣肉を食べていたグループでは、もっと悪い結果となっていて、早期死亡のリスクに20%の増加が見られた。これは、軽視すべきでない非常に重要な情報に思える。「多くの専門家が、食事から赤肉を減らすこと、またはなくすことを勧めるのも無理はない」という彼の言葉には一理ある。

しかし、悲しいことに、執筆者の常識はここで終わっている。祖母が言った、「コモンセンス(常識)はコモン(共通)ではない」という言葉は、ここでもまた当たっている。

執筆者は反証として、赤身の牛肉をよく食べる人はタンパク質・亜鉛・カリウム・ビタミンB群を多く得ている、と述べている。なるほど、タンパク質か。赤肉があって良かった。というのは、赤肉以外のどんなものからも、十分な量のタンパク質を摂ることができないということか。もちろん、豆を別にすれば。あと、チーズも。豆腐やナッツ、レンズ豆、卵、ヨーグルト、牛乳、魚介類などにもタンパク質は含まれている。それにしても、ベジタリアンと呼ばれる人たちはどのようにして生き残っているのか。このハーバードでの研究を信じるなら、どうやら、ベジタリアンは生き残り、また、生存数も肉食者より多くなる。

ビタミンとミネラルは確かに重要である。これもステーキからしか摂ることができない、ということか。

執筆者が辛うじて示したすべての証拠をもっても、いったい赤肉は体に良いのか、悪いのか、最終的な判決が知りたい。どうやら、「赤肉を毎日1皿食べても健康的な食事はできる」ということである[1]。

それは本当か。「毎日1皿」の量は約3オンス(約85g)とみなされる。赤肉を1日に3オンス(約85g)食べるようになるなんて恐ろしい。

待てよ、ハーバードでの研究では、1日3オンスの赤肉が命を縮めると言っていただけではないか。記事の執筆者は自分自身の記事を読んだのだろうか。「健康的な食事の一部として」という表現を用いて赤肉の摂取を形容することは、「完全な朝食の一部」であると自慢しているシリアルの外箱正面に描かれた、特大ボウルに入った砂糖まみれの朝食シリアルとほぼ同じ意味をなす。しかし、完全な朝食となるのは、山積みにされた全粒小麦のトースト、新鮮な果物、オレンジジュースおよび1ポンド(約500 g)のホウレンソウの隣にこのシリアルが出された場合だけである。ただ、ホウレンソウというのは私のでっち上げだが。

そう、赤肉は体に悪いのである。しかし、上記の記事では、そう言っているものの、あえて赤肉を食べることが想定されている。

リーダーズ・ダイジェストの読者は、この記事からそのように解釈するのではないだろうか。そうに違いない。「健康的な肉食者はどのように食べているか」というタイトルのオキシモロン(矛盾語法)記事(単に「モロン(軽愚な)」記事に過ぎない場合もある)によると、獣肉の「完全な」一人前量はトランプ一組の枚数(52)とほぼ同じ、と提言されている。何にとって完全なのか。冠状動脈か。多くの人は赤肉を食べるとき、目先の変わった店の場合を除いて、一人前の量が「トランプ一組の枚数」より多いかどうかわからない。また、こうしたアドバイスをしても、アメリカ人が1年に100ポンド(約45 kg)以上赤肉を食べるのを防げそうにない。果物と野菜の摂取量との比率で考えれば、100ポンドという量は、はるかに多すぎる[3]。しかし、健康的な食事の一部として赤肉を摂るなら大丈夫だろう、とリーダーズ・ダイジェストには書かれている。

そうか。それが平均的なアメリカ人だと思っているから。元気で健康。野菜を毎日たくさん食べて、大量の赤肉摂取の埋め合わせをしている。そんなはずはない。毎日、果物を2皿、もしくは野菜を3皿食べているアメリカ人はわずか30%であり[4]、果物と野菜に関する米国農務省のガイドラインに準じているアメリカ人は11%に過ぎない[5]。また、調査によると、野菜を全く食べないアメリカ人の割合は、20%という途方もない数字であった[6]。

赤肉を全く摂らないように勧めることは、本当にそれほど大胆なことなのか。そんなことをすれば、リーダーズ・ダイジェストは購読者を失ってしまうのだろうか。広告主も失ってしまうのだろうか。この記事では、これからも赤肉を食べて死亡と病気の危険を冒すよう勧めているのだから、きっと誰かを失いかけているのに違いない。

1日量の亜鉛とビタミンB群を得るために、おびえながら牛を食べる(cow down on cow)必要はないのだ。こうしたものは野菜にたくさん含まれている[7]。肉食者である人はすぐに異論を唱えるかもしれないが、タンパク質が詰まっている植物性食品はたくさんあり、広く市販されているので購入可能である。カリウムの健康的な摂取源は簡単に見つけることができる。ほとんどすべての果物と野菜が、カリウムの優れた摂取源となる[7]。注意深く選んでベジタリアンの食事を実践すれば、タンパク質だけでなく、良好な健康状態に必要なすべての必須栄養素をたっぷり摂ることができる。

ならば考えてみよう。赤肉を食べて死の危険を冒すか、それとも、赤肉をやめて、いずれにせよ実践すべき野菜たっぷりの健康的な食事を実際に試すか。ついでに、ビタミン剤と新鮮な果物も摂ろう。これは実行可能だと思う。

悪いことは言わないので、このばかげたリーダーズ・ダイジェストを「ダイジェスト」(鵜呑みに)することなく、ゴミ箱に放り込もう。実際、そのほうがずっと健康には良いだろう。

 

(Helen Saul Caseの論文 「Raising Student Achievement through Better Nutrition(栄養改善による学生の成績向上)」は、 http://orthomolecular.org/library/jom/2006/pdf/2006-v21n02-p79.pdf のサイトにアクセスすれば無料で閲覧できる。彼女は、「The Vitamin Cure for Women’s Health Problems(女性の健康問題に対するビタミン治療」の執筆者でもある。)

 

参考文献:

1. Woolston, Chris. “Is Meat Good or Bad for you?(獣肉は体に良いか、悪いか?)” Reader’s Digest (July/August 2012): 36-38.

2. Pan A, Sun Q, Bernstein AM, Schulze MB et al. (2012) Red meat consumption and mortality: results from 2 prospective cohort studies(赤肉の摂取量と死亡率との関係:2つの前向きコホート研究から得られた結果). Arch Intern Med. 172(7):555-63. doi: 10.1001/archinternmed.2011.2287.

3. Putnam, J., J. Allshouse, L. S. Kantor. U.S. per capita food supply trends: More calories, refined carbohydrates, and fats.(米国の一人当たりの食品供給傾向:カロリー・精製炭水化物・脂質の増加)” Food Review 25(3) (2002):2-15. http://ers.usda.gov/publications/FoodReview/DEC2002/frvol25i3a.pdf .

4. Centers for Disease Control. CDC Online Newsroom. Majority of Americans not meeting recommendations for fruit and vegetable consumption.(疾病対策センター CDCオンライン・ニュースルーム アメリカ人の大半は果物と野菜の推奨摂取量を満たしていない)” Press Release, September 29, 2009. http://www.cdc.gov/media/pressrel/2009/r090929.htm .

5. Casagrande, S. S., Y. Wang, C. Anderson, et al. Have Americans increased their fruit and vegetable intake? The trends between 1988 and 2002(アメリカ人による果物と野菜の摂取量は増えているか?1988年~2002年の傾向). Am J Prev Med 32(4) (Apr 2007):257-263. Available online(オンラインで閲覧可): http://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797%2806%2900551-4/abstract

6. Balch, J. F., P. A. Balch. Prescriptions for Natural Healing(自然治癒のための処方). New York, NY: Avery Publishing Group, 1990.

7. USDA nutrient database(米国農務省データベース), SR24. http://www.ars.usda.gov/Services/docs.htm?docid=22114

 

日本語版監修:北原健(日本オーソモレキュラー医学会)