米国政府の再度の誤解 — ビタミンDとカルシウムの低すぎる推奨摂取量

12.06.26 オーソモレキュラー医学ニュース

オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(点滴療法研究会)
溝口 徹(新宿溝口クリニック)姫野 友美(ひめのともみクリニック)
齋藤 糧三(日本機能性医学研究所) 北原 健(日本オーソモレキュラー医学会)
翻訳協力西本貿易株式会社ナチュメディカ事業グループ

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オーソモレキュラーメディシン・ニュースサービス(OMNS) 2012年6月14日号

執筆者: William B. Grant, Ph.D.

(OMNS、2012年6月14日) 米国予防医療タスクフォース(USPSTF)は、成人におけるガンと骨粗しょう症性骨折の予防のためのビタミンDおよびカルシウムの補給についてエビデンスのレビューを行い、ガンの一次予防のためにビタミンDをカルシウムと一緒に補給すること、もしくはビタミンDのみを補給することによる有益性と有害性のバランスを評価するには十分なエビデンスがない、という結論を下した[1]。この所見の根拠となっているのは、ビタミンD+カルシウムの補給に関する2つの無作為化比較試験(RCT)ならびに2件の文献レビューによって得られたエビデンスである。
USPSTFによるレビューと推奨事項には、いくつかの問題がある。まず、上記の2つのRCTは本質的に、効果が見られなかったと述べているものであり、USPSTFは、その最も批評的な解釈を受け入れている。1つめの研究[2]については、ガンが研究の第一焦点ではなかったため、ガンの発生率が正しく分析されなかった可能性がある、と主張されている。しかし、対照群の女性におけるガン発生率を、当時ネブラスカ州またはその周辺に住んでいた同じ年齢分布の女性におけるガン発生率と慎重に比較してみると、予想された発生率と見事に一致していることがわかる。サプリメントを摂っていたグループが、サプリメントを摂っていなかったグループとは異なる方法で病気の治療を受けていたことを示すものはない。
2つめの研究[3]では、グループ全体について、ビタミンD+カルシウムの補給と、ガン発生率との間に、統計的に有意な相関関係は見られなかった。しかし、この研究の結果を再分析したところ、以下が判明した[4]。

無作為化の時点で、個人的にカルシウムのサプリメントもビタミンDのサプリメントも摂っていなかった女性15,646人(43%)において、カルシウム+ビタミンDの補給により、ガン全体のリスク、乳ガンのリスク、および浸潤性乳ガンのリスクに14~20%という有意な低下が見られ、結腸直腸ガンについては有意ではなかったが17%のリスク低下が見られた。個人的にカルシウムまたはビタミンDのサプリメントを摂っていた女性グループでは、カルシウム+ビタミンDを補給してもガンのリスクは変わらなかった(HR: 1.06-1.26)。

これは、調査の開始時点でサプリメントを摂っていたグループではこうした効果がすでに得られていたため、カルシウムとビタミンDを追加補給しても、それほど効果がなかったことを暗示している。また、USPSTFが見落とした最近の論文によると、生検で低悪性度の前立腺ガンであることが確認された男性グループに1年間4,000 IU/日のビタミンD3を与えたところ、腫瘍退縮率が、歴史的対照では20%であったのに対し、55%となっていた[5]。見たところ、適量のビタミンDは、大幅なリスク低下をもたらす可能性がある。夏の昼間に十分な量の日光を浴びることがない人の場合、サプリメントが大きな違いをもたらす可能性がある。
次に、2つめの大きな問題であるが、USPSTFでは、ビタミンDが薬のように扱われている。調合薬は、明らかに人工物であり、有効性と有害性を評価する必要があるため、臨床試験による検証を行わなければならない。ほとんどの人にとって、太陽紫外線B波(UVB)がビタミンDの主要摂取源であり、人が地球上で歩くようになる以前からずっと、UVBは、最適な健康状態を実現するための重要な要因となっている。ビタミンDは薬ではなく、日光を受けて皮膚中で合成されるものである! 皮膚の色素沈着は、人が住んでいる場所に適合し、皮膚ガンのリスクを下げるのに十分な濃さにする一方、ビタミンDを十分に生成できるだけの明るさを保つ[6]。このため、ガンのリスク低下におけるビタミンDの役割を評価するためには、地理学的研究および観察研究から得られたエビデンスも用いるべきである。
地理学的研究から得られたエビデンスでは、太陽光UVB量が多い地域に住んでいる人々はガンの発生率および(または)死亡率が低いことが明示されている。最近のレビューでは、以下の結論が下されている[7]。

このレビューでは、膀胱ガン、乳ガン、子宮頸ガン、結腸ガン、子宮内膜ガン、食道ガン、胃ガン、肺ガン、卵巣ガン、膵臓ガン、直腸ガン、腎臓ガン、外陰ガン、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫という15種類のガンについて、太陽光UVBとの強い逆相関関係が一貫して見られた。その他に、脳腫瘍、胆嚢ガン、喉頭ガン、口腔・咽頭ガン、前立腺ガン、甲状腺ガン、白血病、黒色腫、多発性骨髄腫という9種類のガンについては、それより弱いがエビデンスが存在している。

ガンと診断された時点またはその前の時点で測定された血清25-ヒドロキシビタミンD [25(OH)D] 濃度にもとづく観察研究も有用である。診断された時点で血清25(OH)D濃度あ測定された症例対照研究では、血清25(OH)D濃度と、ガン発生率との間に最も強い逆相関関係が見られている。メキシコで行われた最も新しい研究[6]を含む、乳ガンとの関係を調べた5つの研究によると、血清25(OH)D濃度が155 nmol/L(62 ng/mL)であったグループは、25 nmol/L(10 ng/mL)であったグループと比較して、乳ガンの発生率が70%低くなっていた[助成金、提出済]。
コホート研究によるネスト化症例対照研究も有用であるが、こうした研究は概して、登録時点での血清25(OH)D濃度を1回報告するだけで、その後最長28年間被験者を追跡しているため、結果の解釈が他より難しい。追跡期間中に、血清25(OH)D濃度は大抵変化するため、観察される効果は低くなる [8]。
地理学的研究や観察研究から得られた結果はRCTを行って検証する必要があると再三繰り返されているが、これについては幸運を祈る。ビタミンDに関するRCTを正しく実施することは、数々の理由できわめて難しい。一つには、ビタミンDの摂取源がいくつかあるため、サプリメントの効果を分離するのは難しい[4]。また一つには、経口摂取量が同じでも、血清25(OH)D濃度には大きな個人差がある[9]。また、入手可能な情報を用いて、血清25(OH)D濃度と健康転帰との関係を推定することが重要である。この他にも、試験に参加する人の血清25(OH)D濃度が、サプリメントによってビタミンDを追加補給すれば健康転帰に測定可能な影響が生じる範囲にあることも重要である。さらに、25(OH)D濃度の測定を、最低でも毎年、または調査期間中2回行うことが重要である[10]。女性健康イニシアティブ(訳註:閉経後女性を対象に実施された米国での大規模研究)のRCT研究[3]は、こうした指針に沿っていなかったため、結果として、肯定的な結果がほとんど見られなかった。

地理学的研究、観察研究およびRCTからこれまでに入手することができた最善情報によれば、最適な健康状態を実現するためには、血清25(OH)D濃度を100 nmol/L (40 ng/mL)以上にすべきである。この濃度に達するためには、1,000~5,000 IU/日のビタミンDが必要となり得る。また、血清25(OH)D濃度は、ビタミンD補給プログラムの開始前に測定し、その後、数ヶ月間補給してから再測定することが推奨される。

 

開示:

執筆者は、UV財団法人(バージニア州マクリーン)、バイオテック・ファーマカル(アーカンソー州フェーエットビル)、ビタミンD評議会(カリフォルニア州サンルイスオビスポ)、ビタミンD協会(カナダ)、およびサンライト・リサーチ・フォーラム(フェルトーベン)から資金提供を受けている。

 

参考文献:

1. Vitamin D and Calcium Supplementation to Prevent Cancer and Osteoporotic Fractures in Adults: U.S. Preventive Services Task Force Recommendation Statement. June 12, 2012(成人におけるガンと骨粗しょう症性骨折を予防するためのビタミンDとカルシウムの補給:米国予防医療タスクフォースによる勧告声明 2012年6月12日). http://www.uspreventiveservicestaskforce.org/draftrec3.htm

2. Lappe JM, Travers-Gustafson D, Davies KM, Recker RR, Heaney RP. Vitamin D and calcium supplementation reduces cancer risk: results of a randomized trial(ビタミンDとカルシウムの補給によるガンリスクの低下:無作為化試験の結果). Am J Clin Nutr. 2007;85:1586-91.

3. Wactawski-Wende J, Kotchen JM, Anderson GL, Assaf AR, Brunner RL, O’Sullivan MJ, et al. Calcium plus vitamin D supplementation and the risk of colorectal cancer(カルシウム+ビタミンDの補給と結腸直腸ガンのリスクとの関係). N Engl J Med 2006;354:684-96.

4. Bolland MJ, Grey A, Gamble GD, Reid IR. Calcium and vitamin D supplements and health outcomes: a reanalysis of the Women’s Health Initiative (WHI) limited-access data set(カルシウムとビタミンDのサプリメントと健康転帰との関係:女性健康イニシアティブ(WHI)によるアクセス制限データセットの再分析). Am J Clin Nutr. 2011;94:1144-9.

5. Marshall DE, Savage SJ, Garrett-Mayer E, Keane TE, Hollis BW, Host RL, et al. Vitamin D3 supplementation at 4000 international units per day for one year results in a decrease of positive cores at repeat biopsy in subjects with low-risk prostate cancer under active surveillance(1年間にわたる4,000 IU/日のビタミンD3補給の結果、低リスクの前立腺ガンがある積極的監視下の被験者にて反復生検時の陽性コア率が低下). J Clin Endocrinol Metab. April 16, 2012 jc.2012-1451 epub.

6. Grant WB. Ecological studies of the UVB-vitamin D-cancer hypothesis; review(紫外線B波とビタミンDとガンとの関係に関する仮説の生態学的研究:レビュー). Anticancer Res. 2012;32:223-36.

7. Fedirko V, Torres-Mej¡a G, Ortega-Olvera C, Biessy C, Angeles-Llerenas A, Lazcano-Ponce E, et al. Serum 25-hydroxyvitamin D and risk of breast cancer: results of a large population-based case-control study in Mexican women(血清25-ヒドロキシビタミンDと乳ガンのリスクとの関係:メキシコの女性を対象とした大規模集団ベース症例対照研究の結果). Cancer Causes Control. 2012;23:1149-62.

8. Grant WB. Effect of interval between serum draw and follow-up period on relative risk of cancer incidence with respect to 25-hydroxyvitamin D level; implications for meta-analyses and setting vitamin D guidelines(25-ヒドロキシビタミンD値に関する、血清値測定とフォローアップ期間との間隔による、ガン発症の相対リスクに対する影響:メタ分析およびビタミンDに関する指針の設定に対する影響), Dermatoendocrinol. 2011;3:3:199-204.

9. Garland CF, French CB, Baggerly LL, Heaney RP. Vitamin D supplement doses and serum 25-hydroxyvitamin D in the range associated with cancer prevention(ビタミンDサプリメントの用量と、ガン予防に関連している範囲内の血清25-ヒドロキシビタミンD). Anticancer Res 2011;31:617-22.
10. Lappe JM, Heaney RP. Why randomized controlled trials of calcium and vitamin D sometimes fail(カルシウムとビタミンDに関する無作為化比較試験が時々失敗する理由). Dermatoendocrin. 2012;4(2) epub

日本語訳監修:齋藤 糧三(日本機能性医学研究所)