おばあちゃんが毎日飲んでいるマルチビタミンを危ないと信じ込ませる医学研究ってなに?

12.03.01 オーソモレキュラー医学ニュース

オーソモレキュラー医学ニュースサービスー日本語版

国際版編集主幹Andrew W. Saul, Ph.D. (USA)
日本語版監修柳澤 厚生(点滴療法研究会)
溝口 徹(新宿溝口クリニック)姫野 友美(ひめのともみクリニック)
齋藤 糧三(日本機能性医学研究所) 北原 健(日本オーソモレキュラー医学会)
翻訳協力西本貿易株式会社ナチュメディカ事業グループ

* 国際オーソモレキュラー医学会ニュース<日本語版>は自由に引用・配信ができます。引用の際は必ず引用元「国際オーソモレキュラー医学会ニュース」とURL(https://isom-japan.org/)を記載してください。

執筆者: RobertG. Smith,PhD

最近公表された研究の中に、高齢女性ではマルチビタミン剤および栄養素のサプリメントによって死亡率が増加する可能性があると示唆しているものがある[1]。しかし、この研究の方法と有意性には、いくつかの問題がある。

・この研究は観察研究で、被験者が自分の食習慣とサプリメントの使用について調査書に記入するものであった。その報告によると、マルチビタミン剤を摂っていたグループで、全死亡率がわずかに(1%)高くなっていただけであった。これは微少な影響であり、偶然起き得る範囲を大きく上回るものではない。このような微少な影響から一般論を述べるのは科学的ではない。

・実際、この研究では、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、およびカルシウムとマグネシウムのサプリメント摂取について、死亡リスク低下との関連が見られると報告している。しかし、このことは抄録で強調されなかったため、専門家でない人は、すべてのサプリメントが死亡率増加に関連していると勘違いしてしまう。この研究報告では、ビタミンとその他の栄養素のサプリメントの摂取量は不明であり、合成サプリメントなのか天然サプリメントなのかも明らかでない。また、死亡率との関連が見られたのは、ほとんど、鉄および銅のサプリメントを使用していた場合であった。鉄と銅は、体内に蓄積されやすいため、高齢者が摂ると炎症や中毒を生じる可能性があることがわかっている[2,3,4]。鉄のサプリメント摂取によるリスクを一般化して、すべてのビタミンとその他の栄養素のサプリメントに害があると思わせるべきではない。

・この研究は、いくつかの理由で、科学的な信頼性を欠いている。高齢女性38,000人の調査結果が表にまとめられているが、これは18年という期間にわたり、被験者が自分の食べたものを思い出す方法で行われたものであった。この期間中、調査の回数はわずか3回で、どんな食品とサプリメントを摂ったかという被験者の記憶のみに頼っていた。こうした要因だけで、この研究は信頼することができない。

・被験者の中には、喫煙者(~15%)や、喫煙経験者(~35%)、飲酒者(~45%)、高血圧者(~40%)もおり、心疾患やガンの発症者も多かった。こうしたリスク因子を調整することにより、既存の医学的状態がいくつくか考慮に入れられたのだが、そうすることにより、この研究は、サプリメントの効果について我々がすでに知っていることと矛盾することになった。たとえば、この研究では、いくつかの健康関連要因について調整した結果、ビタミンDの摂取により死亡率が増加すると報告しているが、ビタミンDは心疾患の予防に役立つこと[5]、および多種のガンの予防に役立つこと[6]が、最近、明白に示されている。心疾患もガンも死亡の主要原因である。また、サプリメント使用者は、ホルモン補充療法を受けている可能性が2倍も高く、死亡率増加に対する説明として、サプリメント摂取より、ホルモン補充療法による、というほうが説得力がある。

・この研究では、医師の勧告による影響を考慮に入れていなかった。被験者自身が入退院を繰り返していたことにより、医師および病院の栄養士が、毎日マルチビタミン剤を、それもマルチビタミン剤だけを摂るよう勧めていた可能性が他より高い。研究では、これを考慮に入れておらず、ただ、死亡の一覧表を作り、過去のいくつかの健康状態について数字を修正しようとしただけであった。報告された数字は、他の要因、たとえば、疾患の発症や、処方薬による副作用など、考えられる死亡原因を反映していない。この研究は、統計的相関を報告したものに過ぎず、マルチビタミン剤によって死亡率が増加するという主張を裏付けるもっともな理由を示していない。

・また、教育水準による影響も考慮に入れていなかった。医師が疾患に関する助言をした場合、十分な教育を受けた人であれば、前向きに努力することにより応えることが多い。その医師が処方した薬を飲む人もいれば、食生活の改善に努める人もいるだろう。食生活の改善には、ビタミンや他の栄養素のサプリメントを摂ることも含まれる。このことは、この研究自体によっても示唆されている。つまり、この調査におけるサプリメント使用者は、サプリメントを摂っていなかったグループよりも教育水準が高かったのである。したがって、病気になった被験者のほうが(病気後に)、サプリメントを摂っている可能性が高い、と考えることもできる。また、病気になった人々のほうが死亡する可能性が高いことからも、そうした人々のほうがサプリメントを摂っている可能性が高い、と考えるのは理にかなっている。こうした結果は、純粋に統計的なものであり、ビタミンや他の必須栄養素のサプリメント摂取が疾患や死亡の原因となるというリスク増加を示すものではない。この種の統計的相関は、健康関連の観察研究には非常によく見られるものであり、健康意識の高い人々は惑わされないはずである。

・ビタミンのサプリメントおよび他の栄養素のサプリメントを適量摂取した場合の安全性はわかっているにもかかわらず、この研究では配慮されていなかった。被験者は単純なマルチビタミン錠を1錠飲んでいた可能性が最も高いが、用量としては低く、それよりずっと多い量を摂っても安全である[4,7]。つまり、一般的なマルチビタミン錠に含まれているような低量は、きわめて安全なのである。また、ビタミンや他の栄養素の必要量は人によって異なるため、最善の健康状態を得るため、はるかに多い量を摂らなければならない人もいる[8]。

まとめ:
健康状態が良い高齢女性を対象としたある観察研究によると、死亡したグループのほうが、死亡していないグループよりも、マルチビタミン剤および他の栄養素のサプリメントを摂っていた可能性が高いということであった。その影響は微少なものであり、疾患や死亡に関する何の理由を示すものでもない。むしろ、この研究の方法では、深刻な健康状態にある人は、サプリメントが役立つ場合があることを知っているため、ビタミンおよびミネラルのサプリメントを摂る、ということが示唆されている。実際、この研究では、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、およびカルシウムとマグネシウムの摂取による効果が示されている。したがって、健康状態の改善を望む人は、適量のサプリメントを定期的に摂ることにより、継続的に健康状態の改善と長寿を実現できる可能性があると思われる。

(ロバート G.スミスは、ペンシルバニア大学神経科学科の研究准教授である。彼は、神経科学研究所の会員であり、数十もの学術論文とレビューを執筆している。)


参考文献:

[1] Mursu J, Robien K, Harnack LJ, Park K, Jacobs DR Jr (2011) Dietary supplements and mortality rate in older women.(高齢女性におけるサプリメント摂取と死亡率) The Iowa Women’s Health Study.(アイオワ州女性健康調査) Arch Intern Med. 171(18):1625-1633.

[2] Emery, T. F. Iron and your Health: Facts and Fallacies.(鉄と健康:事実と誤信) Boca Raton, FL: CRC Press, 1991.

[3] Fairbanks, V. F. “Iron in Medicine and Nutrition.”(医学および栄養学における鉄) Chapter 10 in Modern Nutrition in Health and Disease(「健康と疾患における現代栄養学」の第10章), editors M. E. Shils, J. A. Olson, M. Shike, et al., 9th ed. Baltimore, MD: Williams & Wilkins, 1999.

[4] Hoffer, A., A. W. Saul. Orthomolecular Medicine for Everyone: Megavitamin Therapeutics for Families and Physicians.(万人向けの分子矯正医学:家族と医師のためのビタミン大量療法) Laguna Beach, CA: Basic Health Publications, 2008.

[5] Parker J, Hashmi O, Dutton D, Mavrodaris A, Stranges S, Kandala NB, Clarke A, Franco OH. Levels of vitamin D and cardiometabolic disorders: systematic review and meta-analysis.(ビタミンD値と心血管代謝障害:系統的レビューおよびメタ分析) Maturitas. 2010 Mar;65(3):225-36.

[6] Lappe JM, Travers-Gustafson D, Davies KM, Recker RR, Heaney RP. Vitamin D and calcium supplementation reduces cancer risk: results of a randomized trial.(ビタミンDとカルシウムの補給によるガンのリスク低減:無作為化試験の結果) Am J Clin Nutr. 2007 Jun;85(6):1586-91.

[7] Padayatty SJ, Sun AY, Chen Q, Espey MG, Drisko J, Levine M. Vitamin C: intravenous use by complementary and alternative medicine practitioners and adverse effects.(ビタミンC:補完代替医療実践者による静脈内使用および副作用) PLoS One. 2010 Jul 7;5(7):e11414.

[8] Williams RJ, Deason G. (1967) Individuality in vitamin C needs.(ビタミンCの必要性における個体性) Proc Natl Acad SciUSA.57:16381641.

以下の記事も興味深い:

2010年4月29日付 英語版分子矯正医学ニュースサービス 「マルチビタミン剤は危険か? 医薬関係政治家・教育者・記者世界本部(WHOPPER)からの最新情報」

http://orthomolecular.org/resources/omns/v06n15.shtml

日本語監修:溝口 徹(新宿溝口クリニック)